人の場合、一つの細胞の中には23対の染色体があり、そのなか1本1本の中に平均で1億の塩基がある。
そして、この一本のDNAは約3.3cmある。よってDNAは直径2nm(nm=100万分の1mm)、長さが約3.3cmの糸とみなすことができる。これは直径が10センチのものに例えると、長さは3300kmに相当する。この23対のDNAをすべてあわせると長さは合計2mにもなる。ここで、遺伝子とDNAとの意味の違いを説明しておく。
DNAとは「DNA」のセクションで見てもらえば詳しく分かるが、デオキシリボ核酸という物質の名前である。1本のDNAにはタンパク質をつくるための暗号(ATGCGTCATCGGC・・・)が並んでいるが、1本のDNAで一つのタンパク質をつくるわけではなく、1本のDNAのある一部分が一つのタンパク質をつくるために働き、全体としてさまざまなタンパク質を作り出す。
遺伝子とはこのタンパク質をつくりだすために働くDNAの一部分のことをさす。
また、DNAは大きく分けて3つの部分からなる。
1)構造遺伝子と呼ばれる。どのようなタンパク質を作るか命令する。
2)調節部位と呼ばれる。タンパク質をいつつくるか、どれだけつくるか、つくらないべきかどうかを命令する。
以上の1)と2)をあわせたDNAのことを遺伝子という。
そして、3つめの働きはどのような役割を果たしているのかよくはまだわからない部分である。実はこの部分が一番割合が多く、全体のDNAの90%から95%を占める。なお、遺伝子の機能の割合は以下のようになっている。
最近になって(98年8月)暗号解読が終わった遺伝子はすべてのヒト遺伝子約10万個のうち3万に達した。これまでに明らかになったヒト遺伝子の働きは以下のようになっている。
遺伝子とタンパク質の発現:22%
代謝:17%
細胞と細胞の間のシグナル:12%
免疫、ホメオスタシス:12%
細胞の建築材料や細胞を動かす:8%
細胞分裂とDNAの合成:4%
どの分野にも入らない:25%
一番割合の高いものは、遺伝子とタンパク質の発現にかかわる遺伝子で、22%を占める。すなわち、タンパク質のアミノ酸配列を命令する遺伝子、どの遺伝子が転写されるべきかを決める遺伝子、mRNAからの翻訳をコントロールする遺伝子である。
次に、代謝の遺伝子で17%。食べ物を分解してエネルギーやからだの建築材料にするための酵素をコードする遺伝子である。第3位は、細胞と細胞との間を行ったり来りするホルモンをコントロールする遺伝子で12%、同じく第3位は免疫とからだの恒常性(ホメオスタシスといい、体温、汗、血液の量などをコントロールして生物を生き長らえさせるしくみ)を維持するタンパク質の遺伝子で、12%。そして次には細胞の建築材料や細胞を動かすための遺伝子で8%。